数列の漸化式と特性方程式 なぜ異なる項を同じ文字で置けるのか?
漸化式 $a_{n+1} = p a_n + q$ を解く際、なぜ $a_{n+1}$ と $a_n$ を同じ文字 $\alpha$ に置き換えて良いのか?
その「正体」と「等比数列への帰着」という本質を、ビジュアルを交えて分かりやすく解き明かします。
1. はじめに:目的は「等比数列」への帰着
まず前提として、多くの漸化式はそのままでは解けません。私たちが公式として一般項を知っているのは、基本的に以下の3つの形だけです。
| 数列の種類 | 漸化式 | 一般項 |
|---|---|---|
| 等差数列型 | $$a_{n+1} = a_n + d$$ | $$a_n = a_1 + (n-1)d$$ |
| 等比数列型 | $$a_{n+1} = r a_n$$ | $$a_n = a_1 r^{n-1}$$ |
| 階差数列型 | $$a_{n+1} = a_n + f(n)$$ | $n \geqq 2$ のとき $$a_n = a_1 + \sum_{k=1}^{n-1} f(k)$$ |
問題の漸化式 $$a_{n+1} = p a_n + q$$ は、このどれにも当てはまりません。しかし、もしこの式を次のような形に変形できたらどうでしょうか?
ここで、数列のカタマリである $a_n - \alpha$ を新しい数列 $b_n$ と置き換えてみましょう。
$$a_n - \alpha = b_n$$ とおくと、左辺の $a_{n+1} - \alpha$ は $b_{n+1}$ となります。
つまり、式は次のようにシンプルな形になります。
この形になれば、数列 $\{b_n\}$ は「初項 $b_1 = a_1 - \alpha$、公比 $p$ の等比数列」になり、一気に解決へと向かいます。つまり、特性方程式を解くという行為は、この「理想の形(等比数列)」に変形するための「$\alpha$」を探す作業に他なりません。
$$a_{n+1} = p a_n + q$$
$$a_{n+1} - \alpha = p (a_n - \alpha)$$
$a_n - \alpha = b_n$ とおいたとき、「$n$ を $n+1$ に進めるのだから、$-\alpha$ も $-(\alpha + 1)$ になるのでは?」と勘違いしてしまうことがあります。
【間違い】
しかし、$\alpha$ はただの定数(変化しない数字)です。
たとえば、$a_n - 3 = b_n$ という置き換えを考えてみましょう。
- $n=1$ のとき: $b_1 = a_1 - 3$
- $n=2$ のとき: $b_2 = a_2 - 3$
- $n=3$ のとき: $b_3 = a_3 - 3$
このように数字が増えても、後ろの「$-3$」は変化しません。
したがって、$n$ が $n+1$ になったときも、
となります。これと同じ理由で、$a_n - \alpha = b_n$ とおけば、$b_{n+1} = a_{n+1} - \alpha$ となるのです。
「特性(characteristic)」には、その数列の性質を決定づける固有の性質という意味があります。方程式を解くことで得られる値 $\alpha$ は、数列が一定の割合で変化し続ける際の「中心」や「目標値(極限値)」のような役割を果たすことが多いため、このように呼ばれています。
2. 特性方程式が導かれるプロセス
では、なぜ $\alpha = p \alpha + q$ という式が出てくるのか、逆算して考えてみましょう。
私たちが目指す「理想の形」を展開してみます。
$$a_{n+1} = p a_n - p \alpha + \alpha$$
$$a_{n+1} = p a_n + \alpha(1 - p)$$
この展開した式が、もともとの問題文の式と完全に一致しなければなりません。
【展開した式】
$$a_{n+1} = p a_n + \fcolorbox{#d32f2f}{#fff0f0}{$\displaystyle\color{#d32f2f}{\alpha(1 - p)}$}$$【もともとの式】
$$a_{n+1} = p a_n + \fcolorbox{#d32f2f}{#fff0f0}{$\displaystyle\color{#d32f2f}{q}$}$$背景に色をつけて強調した定数項の部分を比較すると、以下のようになります。
$$q = \alpha - p \alpha$$
$$\alpha = p \alpha + q$$
ここで出てきた式 $\alpha = p \alpha + q$ こそが、私たちが「特性方程式」と呼んでいるものの正体です。
3. 最終結論
特性方程式で求めた $\alpha$ を使って $a_{n+1} - \alpha = p(a_n - \alpha)$ と変形することは、単なるテクニックではなく、論理的な裏付けに基づいた必然的な式変形です。
まとめ:
- $a_{n+1} = p a_n + q$ を直接解くのは難しい。
- 等比数列 $a_{n+1} - \alpha = p (a_n - \alpha)$ の形への帰着を目指す。
- その変形を成立させるための $\alpha$ の条件式が、偶然にも $a_{n+1}$ と $a_n$ を置き換えた特性方程式と一致する。
- だから、特性方程式を解くことで「理想の変形」が可能になる。
求めた $\alpha$ を使って $a_{n+1} - \alpha = p (a_n - \alpha)$ を作った後、一度その式を展開してみてください。必ず元の漸化式 $a_{n+1} = p a_n + q$ に戻るはずです。戻れば、あなたの求めた $\alpha$ は正解です。
4. 具体的な例題と解答例
ここまでの知識を使って、実際の漸化式を解いてみましょう。
【例題】
次の条件によって定められる数列 $\{a_n\}$ の一般項を求めよ。
$$a_1 = 5, \quad a_{n+1} = 3 a_n - 4$$
【解答】
与えられた漸化式を変形すると、
となる。
ここで、$a_n - 2 = b_n$ とおくと、$a_{n+1} - 2 = b_{n+1}$ となるため、
となり、数列 $\{b_n\}$ は公比 $3$ の等比数列である。
また、初項 $b_1$ は、
である。したがって、数列 $\{b_n\}$ の一般項は
$$b_n = 3^n$$
となる。$b_n = a_n - 2$ であるから、
$$a_n = 3^n + 2$$
漸化式の特性方程式が持つ意味を理解すれば、解法が「単なる暗記」から「解ける形への論理的な翻訳作業」へと変わるはずです。