定義と図解でスッキリわかる 関数の微分可能性の証明
\( y=x \) と \( y=|x| \) を例に、「ある点で微分可能である」ことと「関数全体として微分可能である」ことの違いを、極限の計算とグラフから視覚的に解説します。
微分可能の定義
関数 \( f(x) \) がある点 \( x = a \) で微分可能であるとは、次の極限が存在することをいいます。
このとき、この極限値を微分係数と呼び、\( \boldsymbol{f'(a)} \) と表します。
また、関数 \( f(x) \) が微分可能である(微分可能な関数である)とは、その定義域のすべての点で微分可能であることをいいます。
関数がある点で「微分可能」であるということは、グラフがその点で「滑らかにつながっている」(=接線がただ1本に引ける)ことを意味します。
1. \( y=x \) が \( x=0 \) で微分可能であること
関数 \( f(x) = x \) とします。点 \( x=0 \) における微分係数の定義式に当てはめると、次の極限を計算することになります。
\( f(0+h) = 0+h = h \)、\( f(0) = 0 \) であるため、式に代入して計算します。
極限値が \( 1 \) として存在するため、定義より \( y=x \) は \( x=0 \) で微分可能であることが示されました。
【別解】右側極限と左側極限を分けて調べる方法
より厳密に、右側からと左側から近づけた場合を分けて計算することもできます。
右側極限(\( 1 \))と左側極限(\( 1 \))が一致するため、極限 \( \lim_{h \to 0} \frac{h}{h} \) は \( 1 \) として存在します。
したがって、定義より \( y=x \) は \( x=0 \) で微分可能であることが示されました。
\( y=x \) は直線です。直線はどこで切り取っても「傾きが一定(この場合は1)」であり、尖った部分がないため、直感的に考えてもすべての点で微分可能です。
2. \( y=|x| \) が \( x=0 \) で微分可能でないこと
関数 \( f(x) = |x| \) とします。点 \( x=0 \) における微分係数の極限式を調べます。
この極限が存在するかどうかを確認するため、右側極限(\( h \to +0 \))と左側極限(\( h \to -0 \))をそれぞれ計算します。
\( h > 0 \) のとき、絶対値の定義より \( |h| = h \) です。
\( h < 0 \) のとき、絶対値の定義より \( |h| = -h \) です。
右側極限(\( 1 \))と左側極限(\( -1 \))が一致しないため、\( \lim_{h \to 0} \frac{|h|}{h} \) という極限は存在しません。
したがって、定義より \( y=|x| \) は \( x=0 \) で微分可能ではないことが示されました。
グラフを見てわかるように、\( x=0 \) の点でグラフが「V字型」に折れ曲がって尖って(とがって)います。
このような点では「ただ1つの接線」を引くことができず、数学的に「微分不可能」となります。
極限 \( \lim_{x \to a} f(x) \) が存在する条件は、「右側極限と左側極限が存在し、かつそれらが一致すること」です。絶対値を含む関数では、場合分けをして両側から近づける確認が必須です。
3. \( y=x \) が「微分可能(な関数)」であること
関数 \( f(x) = x \) が、定義域の任意の実数 \( x \) において微分可能であることを示します。
任意の実数 \( x \) に対してこの極限が存在し、値は常に \( 1 \) となります。すべての実数において微分可能であるため、\( y=x \) は微分可能(微分可能な関数)であることが示されました。
4. \( y=|x| \) が「微分可能」でないこと
関数が単に「微分可能である」と言う場合、それは「定義域のすべての点で微分可能であること」を意味します。
したがって、「微分可能でない」ことを証明するには、微分可能でない点が少なくとも1つ存在すること(反例)を示せば十分です。
証明2において示した通り、関数 \( f(x) = |x| \) は点 \( x=0 \) において微分可能ではありません。
定義域全体で見たとき、微分不可能となる点(\( x=0 \))が存在するため、関数 \( y=|x| \) は(関数全体としては)微分可能ではないことが示されました。
※補足:\( x \neq 0 \) の点では \( y=|x| \) はそれぞれ微分可能ですが、「すべての点で」という条件を満たさないため、関数全体として微分可能とは呼べません。
補足:高校数学における「関数全体としての微分可能性」の扱い
上記3や4のような「関数全体として微分可能かどうか」という概念は、高校数学(数学IIや数学III)においても学習します。教科書等でも「関数 \( f(x) \) がある区間のすべての点で微分可能であるとき、その区間で微分可能であるという」といった形で定義されています。
ただし、定期テストや大学入試などの問題として出題される場合、単に「\( y=|x| \) が微分可能でないことを示せ」と問われることはまれです。どの点について議論すべきかの曖昧さを避けるため、通常は「\( x=0 \) において微分可能でないことを示せ」のように、調べるべき点が具体的に指定されます(上記1や2のケース)。
一方、「すべての点で微分可能」であることの証明(上記3のケース)は、導関数 \( f'(x) \) を定義に従って求める計算そのものであり、「導関数を求めよ」という形で頻繁に出題されます。
「絶対値のついた関数の微分可能性」がテストに出た場合は、中身が \( 0 \) になる点(折れ曲がる点)がターゲットになります。
グラフを書いて「尖っている点」を見つけ、そこで右側極限と左側極限を計算して「一致しない」ことを示すのが王道のパターンです。