数学III・微積分 合成関数の微分法の公式の証明
2つの関数が連なる「合成関数」の微分を、微小変化の比の極限と「外部・内部」の構造から視覚的に解き明かします。
1. 関数を分解して前提を整理する
複雑な関数を扱うために、2つの関数を \( y = f(u) \) と \( u = g(x) \) と置きます。これらを組み合わせたものが、合成関数 \( y = f(g(x)) \) です。
ここで、\( y = f(u) \) が微分可能であり、かつ \( u = g(x) \) も微分可能であるならば、その合成関数 \( y = f(g(x)) \) も微分可能になります(理由については第2節で後述)。
このとき、それぞれの関数の導関数は、微小変化 \( \Delta x \)、\( \Delta u \)、\( \Delta y \) の極限を用いて次のように表されます。
導関数(\( \frac{dy}{dx} \) など)は、ある変数がほんの少し変化したとき、結果がどれだけ変化するか(微小変化の比)の極限をとったものです。
2. 導関数の積への変形と証明
それでは、求めたい合成関数の導関数 \( \frac{dy}{dx} \) を証明していきます。
変数の微小な増分を考えたとき、分数のように約分できる性質を利用して、次のように式を変形します。
\[ \frac{\Delta y}{\Delta x} = \frac{\Delta y}{\Delta u} \cdot \frac{\Delta u}{\Delta x} \]\( \Delta y \) や \( \Delta x \) は具体的な「数値(差分)」なので、通常の分数として約分などの計算が可能です。
一方、\( \frac{dy}{dx} \) は全体で「極限値」を表す1つの記号(ライプニッツの記法)であり、\( dy \) と \( dx \) という別々の数値の割り算ではありません。
そのため、\( \frac{dy}{du} \cdot \frac{du}{dx} \) は「\( du \) で約分している」わけではなく、「極限の計算をした結果、まるで約分したかのように綺麗な形で公式が成り立つ」というのが厳密で正しい解釈です。
STEP 1の \( \frac{\Delta y}{\Delta u} \) という変形は、実は \( \Delta u = 0 \) のときに分母が0になるという数学的な欠陥を抱えています。
これを回避するため、大学の微積分では割り算を使わず、誤差 \( \varepsilon \) を用いた掛け算の式(1次近似)で定義します。
この式の両辺を \( \Delta x \) で割り、\( \Delta x \to 0 \) の極限をとることで、\( \Delta u = 0 \) の場合でも破綻せずに公式を厳密に証明できます。
上の式の両辺において、\( \Delta x \to 0 \) の極限をとります。
導関数 \( \frac{dy}{dx} \) の定義に従って式を展開していきます。
第1節で触れた「合成関数も微分可能になる」理由は、左記のSTEP 2の式展開に隠れています。
高校数学の定義では、「微分可能」とは微小変化の比の極限が有限の値として定まることです。
- \( f(u) \) は微分可能なので、\( \lim_{\Delta u \to 0} \frac{\Delta y}{\Delta u} \) は有限の値 \( f'(u) \) に定まります。
- \( g(x) \) は微分可能なので、\( \lim_{\Delta x \to 0} \frac{\Delta u}{\Delta x} \) も有限の値 \( g'(x) \) に定まります。
STEP 2で示したように、全体の極限はこれら2つの極限の掛け算に分解されます。「各パーツの極限が定まるから、全体の極限も必ず有限の値に定まる」という論理によって、STEP 2の導関数の計算自体が「合成関数も微分可能である」ことの証明になっているのです。
\( u = g(x) \) は微分可能(すなわち連続)であるため、\( \Delta x \to 0 \) となるとき、\( \Delta u \to 0 \) となります。その理由について、順を追って確認しましょう。
① \( u = g(x) \) が連続であるということは、極限を用いて次のように表せます。
② 右辺の \( g(x) \) を左辺に移項し、極限の性質を利用して1つの \( \lim \) にまとめます。
③ ここで、\( \Delta u \) は \( u \) の微小変化量なので \( \Delta u = g(x + \Delta x) - g(x) \) です。これを代入すると、
この流れにより、\( \Delta x \to 0 \) となるとき、\( \Delta u \to 0 \) となることが証明されました。これを利用して、先ほどの式の極限を書き換えます。
合成関数の微分法の公式
STEP 3の「②」の変形について補足します。
式を移項した直後の \( \lim_{\Delta x \to 0} g(x + \Delta x) - g(x) = 0 \) の状態では、\( \lim \) は最初の項にしかかかっていません。
しかし、\( g(x) \) には変数 \( \Delta x \) が含まれないため、\( \lim_{\Delta x \to 0} g(x) = g(x) \) と表すことができます。
この性質を用いてあえて \( \lim \) を補うことで、全体を中括弧でくくって1つの極限として表現できるようになります。
3. 別の表記法と「言葉」による理解
先ほど導いた公式は、プライム記号(\( ' \))を用いると、関数の中身が分かりやすい別の表記になります。
\( y = f(u) \) を \( u \) で微分した \( \frac{dy}{du} \) は \( f'(u) \)、
\( u = g(x) \) を \( x \) で微分した \( \frac{du}{dx} \) は \( g'(x) \) と書けるため、次のように表せます。
さらに、\( u \) を元の \( g(x) \) に戻すと、最も実用的な公式の形になります。
「外部関数」と「内部関数」という見方
この公式を丸暗記するのではなく、言葉で構造を理解すると計算ミスが劇的に減ります。
- \( f(u) \) のような大枠の関数を 外部関数 と呼びます。
- \( g(x) \) のように中に入っている関数を 内部関数 と呼びます。
この言葉を使うと、上記の公式は次のように翻訳できます。
つまり、「まず外側をそのまま微分して、後から中身の微分を掛け算する」という操作を行っているに過ぎないのです。
4. 具体的な例題と解答
これまで学んだ公式を使って、実際に関数を微分してみましょう。
次の関数を微分せよ。
\( u = 4x^2 - 5 \) とおくと、\( y = u^6 \)
与えられた関数は、\( y = u^6 \) と \( u = 4x^2 - 5 \) の合成関数である。
よって、合成関数の微分法の公式より、
最後に \( u \) を元の式に戻して、
先ほどの「外部関数・内部関数」の考え方を使うと、置き換え(\( u = \cdots \))を書かずに暗算で解くこともできます。
- 外部関数の微分:
\( (\bigcirc)^6 \to 6(\bigcirc)^5 \) - 内部関数の微分:
\( 4x^2 - 5 \to 8x \)
これらを掛け合わせて、
となり、整理すれば同じ答え \( 48x(4x^2 - 5)^5 \) が得られます。