本質から理解する数学・図解解説

中心が原点にない場合の 円の接線の方程式の証明

中心 \( (a,b) \)、半径 \( r \) の円における公式の導出を、垂直条件式変形の工夫から視覚的に解き明かします。

1. グラフで状況を整理する

中心が \( C(a, b) \) である円とその周上の点 \( P(x_0, y_0) \) における接線の関係を図示します。接線の最大の性質は、「接点を通る半径と接線が互いに垂直である」ことです。

\(C(a, b)\)
\(P(x_0, y_0)\)
接線 \(PT\)
💡 幾何学的な鍵

垂直条件 \( m \cdot m' = -1 \) を利用することで、微積分を使わずに接線の公式を導き出すことができます。

2. 接線の方程式の導出(垂直条件による証明)

円の方程式 \( (x-a)^2+(y-b)^2=r^2 \) を前提として、以下の手順で証明を進めます。

STEP 1: 半径の傾きと垂直条件

中心 \( C(a, b) \) と接点 \( P(x_0, y_0) \) を結ぶ半径 \( CP \) の傾き \( m' \) は、 \[ m' = \frac{y_0-b}{x_0-a} \] 接線の傾きを \( m \) とすると、垂直条件より \( m \cdot m' = -1 \) となるため、 \[ m \cdot \frac{y_0-b}{x_0-a} = -1 \]

これを \( m \) について解くと: \[ m = -1 \div \frac{y_0-b}{x_0-a} = -\frac{x_0-a}{y_0-b} \]

STEP 2: 直線の方程式に当てはめる

点 \( P(x_0, y_0) \) を通り、傾き \( m \) の直線の方程式は: \[ y - y_0 = -\frac{x_0-a}{y_0-b}(x - x_0) \]

STEP 3: 式の展開と整理

STEP 2で求めた式を変形して、円の公式の形に整えていきます。まず、分母を払うと:

\[ (y_0-b)(y - y_0) = -(x_0-a)(x - x_0) \]

展開して変数の項を左辺、定数項を右辺へ移項すると:

\[ (x_0-a)x + (y_0-b)y = x_0(x_0-a) + y_0(y_0-b) \quad \cdots ① \]

円の方程式の形に近づけるため、あえて両辺に \( -a(x_0-a) - b(y_0-b) \) を加えると:

\[ \begin{aligned} &(x_0-a)x - a(x_0-a) + (y_0-b)y - b(y_0-b) \\ &\qquad = x_0(x_0-a) - a(x_0-a) + y_0(y_0-b) - b(y_0-b) \cdots ② \end{aligned} \]

左辺と右辺をそれぞれ共通因数でくくり、因数分解すると:

\[ \begin{aligned} &(x_0-a)(x-a) + (y_0-b)(y-b) \\ &\qquad = (x_0-a)(x_0-a) + (y_0-b)(y_0-b) \cdots ③ \end{aligned} \]

右辺の同じかっこの掛け算を、累乗(2乗)の表記にすると:

\[ (x_0-a)(x-a) + (y_0-b)(y-b) = (x_0-a)^2 + (y_0-b)^2 \quad \cdots ④ \]

ここで、点 \( P(x_0, y_0) \) は円 \( (x-a)^2+(y-b)^2=r^2 \) 上の点であることから、以下の関係式が成り立ちます。

\[ (x_0-a)^2 + (y_0-b)^2 = r^2 \quad \cdots ⑤ \]

よって、④の式の右辺に⑤を代入することで、最終的な公式が完成します。

\[ (x_0-a)(x-a) + (y_0-b)(y-b) = r^2 \]
! 式変形の知恵

単に展開するだけではなく、公式の形を目指してあえて項を加える発想が重要です。ここを乗り越えればあとは代入するだけです。

💡 検算

\( a=0, b=0 \)(原点が中心)とすると、基本公式 \( x_0x + y_0y = r^2 \) に完全に一致することが確認できます。

3. 平行移動による別解(図解による説明)

この公式は、「平行移動」という概念を使うと驚くほどシンプルに理解できます。図を用いてそのプロセスを見てみましょう。

\(x\)
\(y\)
\(C(a, b)\)
\(P(x_0, y_0)\)
【元の円】
平行移動
\(\small (-a, -b)\)
元に戻す
\(\small (+a, +b)\)
\(x\)
\(y\)
\(O(0, 0)\)
\(P'(x_0-a, y_0-b)\)
【原点へ移動】
手順 1:図形全体を原点へ平行移動する

円と接線をセットにして、同じ座標系の中で \( x \) 軸方向に \( -a \)、\( y \) 軸方向に \( -b \) 平行移動します。

この移動により、円の中心は原点 \( (0,0) \) になり、接点は元の位置から引かれた \( P'(x_0-a, y_0-b) \) に移動します。

手順 2:移動後の接線の方程式を求める

移動後の円は、原点中心の \( x^2 + y^2 = r^2 \) です。この円上の点 \( P'(x_0-a, y_0-b) \) における接線は、基本公式より以下のようになります。

\[ (x_0-a)x + (y_0-b)y = r^2 \]
手順 3:接線を元の位置へ戻す

手順2で求めたのは「移動後の接線」です。求めたい「元の接線」にするため、この直線を逆に \( x \) 軸方向に \( +a \)、\( y \) 軸方向に \( +b \) 平行移動して戻します。

図形の平行移動の公式に従い、式中の \( x \) を \( (x-a) \) に、\( y \) を \( (y-b) \) に置き換えると、公式が完成します。

\[ (x_0-a)(x-a) + (y_0-b)(y-b) = r^2 \]
🧠 思考のポイント

この別解の魅力は、「複雑な図形は、いったん原点に移動させて基本公式を使い、最後に元の場所へ戻す」という思考法にあります。

公式を丸暗記するのではなく、この「平行移動して単純化する」アプローチを持っておくと、他の図形問題でも応用が利くようになります。

🔍 図形の平行移動のおさらい

方程式で表された図形(直線や円など)を平行移動させるための公式を復習しましょう。

図形を \( x \) 軸方向に \( +p \)、\( y \) 軸方向に \( +q \) 平行移動させるには、元の式の

  • \( x \) を \( (x-p) \)
  • \( y \) を \( (y-q) \)

それぞれ置き換えます。

【例】直線 \( y = 2x \) を \( x \) 軸方向に \( +3 \)、\( y \) 軸方向に \( +1 \) 平行移動すると、
\( y - 1 = 2(x - 3) \) となります。

手順3では、この性質を利用して接線の式を元の位置に戻しています。