隣接3項間漸化式と特性方程式 フィボナッチ数列の一般項の導出
基本となる漸化式と特性方程式の考え方を踏まえ、隣接3項間漸化式を用いたフィボナッチ数列の一般項(ビネの公式)の求め方を視覚的な式変形で詳細に解説します。
1. 基本的な漸化式と特性方程式(復習)
前回の学習では、基本的な漸化式と、そのままでは解けない形を「等比数列」に帰着させるための「特性方程式」について学びました。まずは軽く振り返ってみましょう。
| 数列の種類 | 漸化式 | 一般項 |
|---|---|---|
| 等差数列型 | $$a_{n+1} = a_n + d$$ | $$a_n = a_1 + (n-1)d$$ |
| 等比数列型 | $$a_{n+1} = r a_n$$ | $$a_n = a_1 r^{n-1}$$ |
| 階差数列型 | $$a_{n+1} = a_n + f(n)$$ | $n \geqq 2$ のとき $$a_n = a_1 + \sum_{k=1}^{n-1} f(k)$$ |
【用語の確認】
- 漸化式(ぜんかしき): 各項がそれ以前の項からどのように計算されるか(ルール)を定めた関係式のこと。
- 2項間漸化式: $a_{n+1} = 2a_n + 3$ のように、隣り合う2つの項の関係を表した式。
- 隣接3項間漸化式: 今回メインとなる、$a_{n+2} = a_{n+1} + a_n$ のように連続する3つの項の関係を表した式。
$a_{n+1} = p a_n + q$ のような2項間漸化式は、そのままでは解けません。
そこで、式を $a_{n+1} - \alpha = p(a_n - \alpha)$ (等比数列の形) に無理やり変形するために、$a_{n+1}$ と $a_n$ を $\alpha$ に置き換えた特性方程式 $\alpha = p\alpha + q$ を解いて、定数 $\alpha$ を見つけるのでした。
2項間漸化式の特性方程式と解
「解けない漸化式は、特性方程式を使って等比数列に帰着させる」という本質は、今回学ぶより複雑な数列でも全く同じです。
2. フィボナッチ数列と隣接3項間漸化式
この「等比数列への帰着」という強力な武器を使って、今回はフィボナッチ数列の一般項を求めてみましょう。
フィボナッチ数列は、「前の2つの項を足すと次の項になる」というルールで作られる数列です。自然界の様々なところ(花びらの数や松ぼっくりの螺旋など)に現れることで有名です。
具体的に数式で表すと、第3項から第5項までは次のようになります。
$a_4 = a_3 + a_2 = 2 + 1 = 3$
$a_5 = a_4 + a_3 = 3 + 2 = 5$
これを一般化して、漸化式(前の項から次の項を定める式)で表すと、以下のようになります。
このように、連続する3つの項の関係を表す式を隣接3項間漸化式と呼びます。
この式は「前2つの値」がわからないと次が計算できないため、「100番目の数は何?」と聞かれたときに順番に計算していくのが大変です。
そこで、$n$ を代入するだけで値が出る「一般項 $a_n$」を求める必要があります。
3. 3項間漸化式から特性方程式を導く(一般形)
2項間漸化式のときと同じように、「目標とする等比数列の形」から逆算して、特性方程式の正体を探ってみましょう。
隣接3項間漸化式の一般形を $a_{n+2} + p a_{n+1} + q a_n = 0$ とします。これを解くために、次のような「等比数列の形」への変形を目指します。
この理想の式を展開し、元の形と比較できるように整理してみましょう。
$$a_{n+2} - \alpha a_{n+1} - \beta a_{n+1} + \alpha\beta a_n = 0$$
$$a_{n+2} - (\alpha + \beta)a_{n+1} + \alpha\beta a_n = 0$$
この展開した式が、もともとの一般形の漸化式と完全に一致しなければなりません。
【展開した式】
【もともとの一般形】
背景に色をつけて強調した係数の部分を比較すると、$\alpha$ と $\beta$ は以下の関係を満たす必要があることがわかります。
$$\alpha\beta = q$$
「和が $-p$、積が $q$」となる2つの数 $\alpha, \beta$ を求める……。これはまさに、数学Iで学んだ「解と係数の関係」です!
したがって、$\alpha$ と $\beta$ は、2次方程式 $x^2 + px + q = 0$ の2つの解となります。これが3項間漸化式における「特性方程式」の正体です。
隣接3項間漸化式の特性方程式と解
4. 具体例(フィボナッチ数列)への適用と全体図解
理屈が分かったところで、今回のターゲットであるフィボナッチ数列の漸化式に当てはめてみましょう。
フィボナッチ数列の漸化式 $a_{n+2} = a_{n+1} + a_n$ を移項して $=0$ の形にします。
これは、一般形 $a_{n+2} + p a_{n+1} + q a_n = 0$ において、$p = -1, \ q = -1$ の場合にあたります。
先ほどの結論から、特性方程式は $x^2 + px + q = 0$ となるため、今回の特性方程式は $x^2 + (-1)x + (-1) = 0$ 、すなわち、
となります。この方程式を解いて得られる $\alpha, \beta$ を用いて、2つの等比数列を作り出すのが全体の流れです。図解で確認しましょう。
元の漸化式 $a_{n+2} - a_{n+1} - a_n = 0$ に対して、プロセスをショートカットする「特性方程式 $x^2 - x - 1 = 0$」を利用して、2つの等比数列を作り出します。
そして、次のような形を作ります。
この形になれば、数列 $\{a_{n+1} - \alpha a_n\}$ が公比 $\beta$ の等比数列になり、一般項を導き出す準備が整います。この一連の流れをまとめたものが以下の図解になります。
2次方程式を解くと、解が $\alpha$ と $\beta$ の2つ出てきます。
これを利用して等比数列を「2パターン」作ることで、連立方程式のようにして邪魔な $a_{n+1}$ を引き算で消去し、$a_n$ だけの式を導き出すことができるのです。
5. 一般項の導出(ビネの公式の証明)
それでは、実際の値を使って計算を進め、公式を導いてみましょう。
漸化式 $a_{n+2} - a_{n+1} - a_n = 0$ より、特性方程式を立てます。
\[ x^2 - x - 1 = 0 \]
解の公式より、解は $x = \frac{1 \pm \sqrt{5}}{2}$ となります。
ここで、$\alpha = \frac{1 + \sqrt{5}}{2}, \beta = \frac{1 - \sqrt{5}}{2}$ とおきます。
漸化式は、$\alpha, \beta$ を用いて次の2通りに変形できます。
\[ a_{n+2} - \alpha a_{n+1} = \beta(a_{n+1} - \alpha a_n) \] \[ a_{n+2} - \beta a_{n+1} = \alpha(a_{n+1} - \beta a_n) \]1つ目の式より、数列 $\{a_{n+1} - \alpha a_n\}$ は公比 $\beta$ の等比数列です。初項は $a_2 - \alpha a_1 = 1 - \alpha$ です。
ここで解と係数の関係($\alpha + \beta = 1$)から、$1 - \alpha = \beta$ となるため、
同様に、2つ目の式から数列 $\{a_{n+1} - \beta a_n\}$ は公比 $\alpha$ の等比数列です。初項は $a_2 - \beta a_1 = 1 - \beta$ です。
ここで解と係数の関係($\alpha + \beta = 1$)から、$1 - \beta = \alpha$ となるため、
②から①を辺々引きます。
ここで、分母の $\alpha - \beta$ を計算すると、
となります。これを先ほどの式に代入すると、
となり、最後に $\alpha = \frac{1+\sqrt{5}}{2}, \beta = \frac{1-\sqrt{5}}{2}$ を元の値に戻します。
この式を見やすく整理($\frac{1}{\sqrt{5}}$ を前に出す)したものが、完成した公式となります。
フィボナッチ数列の一般項(ビネの公式)
STEP 2で出てきた $1 - \alpha = \beta$ という式変形は非常に鮮やかです。
$x^2 - x - 1 = 0$ の解が $\alpha, \beta$ なので、
和:$\alpha + \beta = 1$
積:$\alpha \beta = -1$
が成り立ちます。この関係を知っていると、初項の計算がぐっと楽になります。
求まった公式には $\sqrt{5}$ という無理数が含まれています。しかし、この式に $n=1, 2, 3 \cdots$ を代入していくと、二項定理によって見事に無理数が打ち消し合い、すべての項が $1, 1, 2, 3, 5 \cdots$ と綺麗な整数になるのです!