1. そもそも「数学的思考」とは?
① 「数値化」を拒絶しない
曖昧な概念を、測定可能な指標に変換する姿勢です。
曖昧な感情
(顧客満足度)
具体的な指標
(満足度スコア)
例えば顧客満足度は、5段階評価アンケートで数値化し、平均値を算出することで、改善点が明確になります。
$$ \text{満足度スコア} = \frac{\sum_{i=1}^{5} (i \times \text{回答者数}_i)}{\text{全回答者数}} $$客観的事実と向き合うことで、「感覚頼りの意思決定」から脱却できます。
② 主観を排した「論理的思考」
事実(データや定義)を元に、誰でも納得できる筋道を立てて結論を導くことです。
全ての人間は死すべきものである。
ソクラテスは人間である。
よって、ソクラテスは死すべきものである。
この客観性が感情論による対立を避け、建設的な議論を可能にします。たとえ失敗しても、論理プロセスが明確なら原因分析が容易で、次への貴重な学びとなります。
2. 今、なぜ必要とされるのか?
ビジネスに「新しい尺度」を作るため
現代ビジネスは、これまで測れなかった価値を数値化することから始まります。
例:杜氏の「匠の技」のデータ化
経験と勘
数式モデル
$$ \text{酒の味} = f(\text{温度}, \text{湿度}, \text{時間}, \dots) $$
これにより、品質安定、事業継承、海外展開が可能になります。
未知の問題を解決するため
過去の成功体験が通用しない現代では、自分の頭で問題を解決する力が必要です。
思考法:困難を「分解」する
- 大きな問題:引越し
- ┣ タスクA:荷造り
- ┣ 食器
- ┗ 書籍
- ┣ タスクB:手続き
- ┣ 役所
- ┗ ライフライン
- ┗ タスクC:掃除
複雑な問題も、管理可能な小タスクに分割すれば必ず解決できます。
3. どうすれば身につくのか?
鍵は、主観を混ぜない「シン・読解力」
文学作品のように行間を読むのではなく、数学の定義や文章を「書かれている通りに」正確に読み解く力です。これは、独自の「数学語」を習得するプロセスに似ています。
【例題1】偶数をすべて選びましょう
定義:「2で割り切れる整数を偶数という」
ありがちな間違いと思考プロセス
「0個のお饅頭は2人で分けられない」という日常のイメージが邪魔をし、定義($0 \div 2 = 0$, 余り0)から離れてしまう。大人の正答率はわずか32%という事実は、多くの人が主観で数学を読んでいる証拠です。
【例題2】1から9までで素数はどれ?
定義:「1より大きい自然数で、正の約数が1と自分自身のみであるもの」
ありがちな間違い: 1, 3, 5, 7
「素数=奇数っぽい」という曖昧なイメージに支配され、定義の「1より大きい」を読み飛ばして1を含めたり、唯一の偶数の素数である2を除外してしまいます。
正しい答え: 2, 3, 5, 7
自分の記憶や主観を補完せず、定義に忠実に読むことが「シン・読解力」の核心です。