本質から理解する数学・図解解説

やり方を暗記する前に! 正負の数の乗法(掛け算)の仕組み

「マイナス×マイナス」はどうしてプラスになるのでしょうか?「速さ×時間=位置」という数直線のイメージと、「ビデオの逆再生」を使って一緒に考えてみましょう。

0. 準備:「速さ×時間」で未来と過去を考える

掛け算のルールを学ぶために、「自転車が進む様子」をイメージしてみましょう。小学校で習った「速さ × 時間 = 道のり(位置)」の公式を使います。

ルール①:進む方向(速さ)

東へ進むことを「+」西へ進むことを「-」とします。
たとえば、東へ秒速 \(3\mathrm{m}\) で進む速さは「\(+3\)」、西へ秒速 \(3\mathrm{m}\) で進む速さは「\(-3\)」と表します。

ルール②:時間の経過(未来と過去)

現在を「\(0\) 秒」とします。
時間が進む未来(〇秒後)を「+」、時間をさかのぼる過去(〇秒前)を「-」とします。
たとえば、「\(5\) 秒後」は「\(+5\)」、「\(5\) 秒前」は「\(-5\)」と表します。

この2つのルールを組み合わせて、「現在地(\(0\))から見て、どこにいるか(どこにいたか)」を考えていきましょう!

💡 用語:乗法(じょうほう)と積

数学では、掛け算のことを乗法(じょうほう)と呼び、その答えのことを「積(せき)」と言います。

💡 時間を戻す=逆再生

「〇秒前(過去)」を考えるときは、録画したビデオを逆再生(巻き戻し)する様子をイメージすると分かりやすいですよ。

1. 同符号の乗法(同じ符号同士を掛ける)

それでは、符号が同じ数同士の乗法(掛け算)について考えてみましょう。

計算例①: \( (+3) \times (+5) \)

東へ秒速3\(\mathrm{m}\)(\( +3 \))」で進む自転車があります。
この自転車が「5秒後(\( +5 \))」にいる位置はどこでしょうか?
東へ向かって進み続けるので、現在地(\(0\))から「東へ15\(\mathrm{m}\)」の位置にいますね。
よって、答えは \( +15 \) です。

▼ \( (+3) \times (+5) \) のイメージ図(東へ進む自転車の未来)

0 (現在地) +3 +15 +3 +3 +3 +3 +3 東へ(+3) が 5回分(5秒)
計算例②: \( (-3) \times (-5) \)

次はマイナス同士を掛ける場合です。
西へ秒速3\(\mathrm{m}\)(\( -3 \))」で進む自転車があります。
この自転車が「5秒前(\( -5 \))」にいた位置はどこでしょうか?
今は現在地(\(0\))にいますが、西へ向かって進んでいる途中なので、時間を5秒巻き戻すと、東の方からやってきたことがわかります。
つまり、過去には「東へ15\(\mathrm{m}\)」の位置にいたはずです。
よって、答えは \( +15 \) になります!

▼ \( (-3) \times (-5) \) のイメージ図(西へ進む自転車の過去)

0 (現在地) +15 -3 本来の(-3) 戻る 戻る 戻る 戻る 戻る 西(-3)の動きを 過去へ5回分 (逆再生)
🚗 例①のプロセス:(+)×(+)

東向きで「再生」

東を向いて進む = 東(+)へ行く

東を向いて未来へ進めば、当然東(+)にたどり着きます。

🚗 例②のプロセス:(-)×(-)

西向きで「逆再生」

西を向いて逆再生 = 東(+)に戻る

西へ進んでいる車をビデオで「巻き戻し(逆再生)」すると、車は後ろ向きに東(+)へ戻っていきます。

用語のおさらい:絶対値

「+」や「-」の符号を取った数字の部分のこと。ここでは「秒速何\(\mathrm{m}\)か」「何秒間か」という純粋な数字の大きさを表します。

2. 異符号の乗法(違う符号同士を掛ける)

今度は、プラスとマイナスが混ざった掛け算です。同じように方向と時間で考えてみましょう。

計算例③: \( (-3) \times (+5) \)

西へ秒速3\(\mathrm{m}\)(\( -3 \))」で進む自転車があります。
この自転車が「5秒後(\( +5 \))」にいる位置はどこでしょうか?
西へ向かって進み続けるので、現在地(\(0\))から「西へ15\(\mathrm{m}\)」の位置にいますね。
よって、答えは \( -15 \) です。

▼ \( (-3) \times (+5) \) のイメージ図(西へ進む自転車の未来)

0 (現在地) -3 -15 -3 -3 -3 -3 -3 西へ(-3) が 5回分(5秒)
計算例④: \( (+3) \times (-5) \)

最後はプラスとマイナスが逆のパターンです。
東へ秒速3\(\mathrm{m}\)(\( +3 \))」で進む自転車があります。
この自転車が「5秒前(\( -5 \))」にいた位置はどこでしょうか?
今は現在地(\(0\))にいて東に向かっているので、時間を5秒巻き戻すと、西の方からやってきたことがわかります。
つまり、過去には「西へ15\(\mathrm{m}\)」の位置にいたはずです。
よって、答えは \( -15 \) になります。

▼ \( (+3) \times (-5) \) のイメージ図(東へ進む自転車の過去)

0 (現在地) -15 +3 本来の(+3) 戻る 戻る 戻る 戻る 戻る 東(+3)の動きを 過去へ5回分 (逆再生)
🚗 例③のプロセス:(-)×(+)

西向きで「再生」

西を向いて進む = 西(-)へ行く

西を向いてそのまま未来へ進めば、当然西(-)にたどり着きます。

🚗 例④のプロセス:(+)×(-)

東向きで「逆再生」

東を向いて逆再生 = 西(-)に戻る

東へ進んでいる車をビデオで「巻き戻し(逆再生)」すると、車は後ろ向きに西(-)へ戻っていきます。

3. 結論:乗法の符号ルールをまとめよう

ここまで見てきたように、掛け算(乗法)の答えの符号は、「方向(+か-)」と「時間(+か-)」の組み合わせで決まることがわかります。
結果的に、「同じ符号を掛けるとプラスになり、違う符号を掛けるとマイナスになる」というシンプルなルールが導かれます。

同符号の乗法(同じ符号同士の掛け算)

  • 符号:+(プラス)にする
  • 数字:絶対値の積(掛け算)を求める
例①: \( (\colorbox{#fee2e2}{$\textcolor{#b91c1c}{+}$}3) \) \( \times \) \( (\colorbox{#fee2e2}{$\textcolor{#b91c1c}{+}$}5) \) \( = \) 同符号は \( \boldsymbol{+} \) 絶対値の積 \( (3 \times 5) \) \( = \) \( \colorbox{#fee2e2}{$\textcolor{#b91c1c}{+}$}15 \)
例②: \( (\colorbox{#e0f2fe}{$\textcolor{#0369a1}{-}$}3) \) \( \times \) \( (\colorbox{#e0f2fe}{$\textcolor{#0369a1}{-}$}5) \) \( = \) 同符号は \( \boldsymbol{+} \) 絶対値の積 \( (3 \times 5) \) \( = \) \( \colorbox{#fee2e2}{$\textcolor{#b91c1c}{+}$}15 \)

異符号の乗法(違う符号同士の掛け算)

  • 符号:-(マイナス)にする
  • 数字:絶対値の積(掛け算)を求める
例③: \( (\colorbox{#e0f2fe}{$\textcolor{#0369a1}{-}$}3) \) \( \times \) \( (\colorbox{#fee2e2}{$\textcolor{#b91c1c}{+}$}5) \) \( = \) 異符号は \( \boldsymbol{-} \) 絶対値の積 \( (3 \times 5) \) \( = \) \( \colorbox{#e0f2fe}{$\textcolor{#0369a1}{-}$}15 \)
例④: \( (\colorbox{#fee2e2}{$\textcolor{#b91c1c}{+}$}3) \) \( \times \) \( (\colorbox{#e0f2fe}{$\textcolor{#0369a1}{-}$}5) \) \( = \) 異符号は \( \boldsymbol{-} \) 絶対値の積 \( (3 \times 5) \) \( = \) \( \colorbox{#e0f2fe}{$\textcolor{#0369a1}{-}$}15 \)
🧠 思考のポイント

掛け算は「マイナス × マイナス = プラス」になるのが一番の山場です。

このルールをただ暗記するのではなく、「ビデオの逆再生」のイメージを持っておくと、なぜそうなるのかが自然と納得できますね!

💡 もう一つの理由:計算の「規則性」

「(-)×(-)=(+)」になる理由は、計算の規則性(パターン)からも説明できます。

\( (-3) \times \)
\( (+2) \)
\( = \)
\( -6 \)
3増える
\( (-3) \times \)
\( (+1) \)
\( = \)
\( -3 \)
3増える
\( (-3) \times \)
\( 0 \)
\( = \)
\( 0 \)
3増える
\( (-3) \times \)
\( (-1) \)
\( = \)
\( +3 \)
3増える
\( (-3) \times \)
\( (-2) \)
\( = \)
\( +6 \)

掛ける数が1減るごとに、答えは「3ずつ増えて」いますね。
この規則通りに進んでいくと、マイナスを掛けたときに答えがプラスになることがハッキリと分かります!

🎯 まとめ:頭の中のステップ

乗法(掛け算)の式を見たら、次の2ステップで一気に計算しましょう!

  1. まずは符号だけを決める!
    (同じなら+、違うなら-)
  2. 符号を書いたら、あとは数字同士の掛け算をするだけ!