二次関数のグラフの平行移動 なぜ式の符号はマイナスになるのか?
具体例を用いたグラフの移動パターンから、誰もが一度はつまずく「x軸方向に移動するとなぜ(x-p)になるの?」という最大の疑問まで、図解と「軌跡の考え方」で視覚的に解き明かします。
1. 中学の復習と基本用語の確認
中学数学では、原点 \( (0,0) \) を一番下の点とする \( y=2x^2 \) のような二次関数を学びました。高校数学では、このグラフが上下左右に移動した形を考えます。まずは、グラフを考える上で重要な「用語」を確認してから、順を追って見ていきましょう。
覚えておきたい基本用語
- 頂点(ちょうてん): 放物線(グラフの曲線)の折り返し地点となる、一番低いところ、または一番高いところの点のことです。
- 軸(じく): 放物線を左右対称に折り返すことができる直線のことです. 頂点を通る縦の直線(\( y \) 軸に平行な直線)になります。式で表すときは「軸の方程式は \(x=p\)」のように書きます。
- 下に凸(したにとつ): 谷底のように、下に向かって出っ張っているグラフの形のことです。(\(x^2\) の係数がプラスのとき。例:\(y=2x^2\))
- 上に凸(うえにとつ): 山のように、上に向かって出っ張っているグラフの形のことです。(\(x^2\) の係数がマイナスのとき。例:\(y=-2x^2\))
\(y=ax^2\) のグラフの形は、
\(x^2\) の係数 \(a\) の符号で決まります。
(頂点が一番下)
(頂点が一番上)
また、\(a\) の絶対値 \(|a|\) によって
グラフの「開き具合」が変わります。
- \(|a|\) が大きいほど、開き具合は狭くなる。
- \(|a|\) が小さいほど、開き具合は広くなる。
まずは基準となるグラフの対応表と形を確認します。
| \(x\) | \(\cdots\) | -2 | -1 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | \(\cdots\) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| \(y\) | \(\cdots\) | 8 | 2 | 0 | 2 | 8 | 18 | 32 | 50 | \(\cdots\) |
対応表とグラフを見ると、\( x=0 \) のときに \( y=0 \) となり、ここが一番低い地点になっています。この形がすべての平行移動の基準となります。
(グラフの形は下に凸、頂点は (0, 0)、軸の方程式は \(x=0\))
一般に、原点を頂点とする二次関数のグラフの式は、
\( y = ax^2 \)
となります。
(頂点は \( (0, 0) \)、軸の方程式は \( x=0 \) になります)
次に、式の最後に「+3」がついたグラフを考えます。
| \(x\) | \(\cdots\) | -2 | -1 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | \(\cdots\) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| \(y\) | \(\cdots\) | 11 | 5 | 3 | 5 | 11 | 21 | 35 | 53 | \(\cdots\) |
対応表やグラフを見ると、基準となる \( y=2x^2 \) の値からすべて「+3」された値になっています。つまり、元のグラフが \( y \) 軸方向(上方向)にそのまま +3 平行移動していることが分かります。
(グラフの形は下に凸、頂点は (0, 3)、軸の方程式は \(x=0\))
一般に、\( y=ax^2 \) のグラフを \( y \) 軸方向に \( q \) 平行移動したグラフの式は、
\( y = ax^2 + q \)
となります。
(頂点は \( (0, q) \)、軸の方程式は \( x=0 \) になります)
今度は、式の中の \( x \) が \( (x-3) \) に置き換わったグラフです。
| \(x\) | \(\cdots\) | -2 | -1 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | \(\cdots\) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| \(y\) | \(\cdots\) | 50 | 32 | 18 | 8 | 2 | 0 | 2 | 8 | \(\cdots\) |
対応表を見ると、\( y=0 \)(頂点)となる場所が \( x=0 \) から \( x=3 \) にズレています。グラフを見ても、頂点を含むすべての値が \( x \) 軸方向(右方向)に +3 平行移動していることが分かります。(※なぜ式ではマイナスになるのかについては後ほど詳しく解説します。)
(グラフの形は下に凸、頂点は (3, 0)、軸の方程式は \(x=3\))
一般に、\( y=ax^2 \) のグラフを \( x \) 軸方向に \( p \) 平行移動したグラフの式は、
\( y = a(x - p)^2 \)
となります。
(頂点は \( (p, 0) \)、軸の方程式は \( x=p \) になります)
最後に、上記の2つを組み合わせた形です。
| \(x\) | \(\cdots\) | -2 | -1 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | \(\cdots\) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| \(y\) | \(\cdots\) | 53 | 35 | 21 | 11 | 5 | 3 | 5 | 11 | \(\cdots\) |
対応表とグラフを確認すると、頂点が \( (0,0) \) から \( (3,3) \) に移動しています。これは元のグラフを \( x \) 軸方向に +3、\( y \) 軸方向に +3 平行移動させたものだということが分かります。
(グラフの形は下に凸、頂点は (3, 3)、軸の方程式は \(x=3\))
一般に、\( y=ax^2 \) のグラフを \( x \) 軸方向に \( p \)、\( y \) 軸方向に \( q \) 平行移動したグラフの式は、
\( y = a(x - p)^2 + q \)
となります。
(頂点は \( (p, q) \)、軸の方程式は \( x=p \) になります)
二次関数の平行移動は、「頂点がどこに移動したか」を追うのが最も確実です。
元の頂点 \( (0,0) \) から移動後の頂点 \( (3,3) \) への変化が、そのまま式の形に表れています。
【まとめ】グラフの比較
ここまで確認した4つの式と値の変化を一つの表とグラフにまとめると、以下のようになります。
| 関数 \ \(x\) | \(\cdots\) | -2 | -1 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | \(\cdots\) |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| \(y=2x^2\) | \(\cdots\) | 8 | 2 | 0 | 2 | 8 | 18 | 32 | 50 | \(\cdots\) |
| \(y=2x^2+3\) | \(\cdots\) | 11 | 5 | 3 | 5 | 11 | 21 | 35 | 53 | \(\cdots\) |
| \(y=2(x-3)^2\) | \(\cdots\) | 50 | 32 | 18 | 8 | 2 | 0 | 2 | 8 | \(\cdots\) |
| \(y=2(x-3)^2+3\) | \(\cdots\) | 53 | 35 | 21 | 11 | 5 | 3 | 5 | 11 | \(\cdots\) |
2. 平行移動の一般化(公式)
上記の具体例を文字を使って一般化すると、次のような公式になります。
二次関数の平行移動の公式
\( x \) 軸方向に \( p \)、\( y \) 軸方向に \( q \) 平行移動したグラフの方程式は
このとき、グラフの頂点は \( (0, 0) \) から \( (p, q) \) へ移動し、軸の方程式は \( x = p \) となります。また、グラフの開き具合を表す係数 \( a \) は移動しても変化しません。
頂点の座標が \( (p, q) \) のとき、式の中の \( x \) の隣は \( -p \)(マイナス)になります。これを「符号が逆になる」と暗記している人も多いですが、なぜそうなるのかを次のセクションで紐解きます。
3. なぜ式の符号が変わるのか?(軌跡の考え方)
「\( x \) 軸方向に +3 平行移動するのに、なぜ式の中では \( (x-3) \) と引き算になるの?」
「\( y \) 軸方向の移動は、なぜそのままの符号で足されているの?」
これらの最大の疑問は、図形の移動を「移動後の新しい点から見て、元の点がどこにあったか(逆算)」という視点で考えることで、すべて論理的に理解できます。
■ ステップで理解する「移動後の式の作り方」
私たちが最終的に知りたいのは、「移動後のグラフの式(移動後の点の \(x\) 座標と \(y\) 座標のルール)」です。そこで、移動後の点を \( B(x, y) \) と置きます。
一方、移動前の元のグラフ \( y = 2x^2 \) 上にある点は、関係性が分かりやすいように「*(アスタリスク)」をつけて \( A(x^*, y^*) \) と置きます。
この点は元のグラフ上にあるので、\( y^* = 2(x^*)^2 \) というルールが成り立っています。
元の点 \( A(x^*, y^*) \) を \( x \) 軸方向に +3、\( y \) 軸方向に +3 移動させたものが新しい点 \( B(x, y) \) ですから、以下の関係(図のグレーの矢印)が成り立ちます。
私たちが知っている唯一のルールは、元のグラフの \( y^* = 2(x^*)^2 \) だけです。このルールを利用するために、先ほどの式を \( x^*= \) と \( y^*= \) の形に直します(逆算)。
図の緑の矢印が示すように、「新しい点 \( B(x, y) \) から見れば、元の点 \( A(x^*, y^*) \) は、そこから 3 戻った(引いた)場所にあった」ということです。ここでマイナスが登場します。
この「逆算して求めた元の点 \( x^*, y^* \)」を、唯一知っているルール \( y^* = 2(x^*)^2 \) に代入します。
これで、知りたいと思っていた「移動後の点 \( B(x, y) \) が満たすルール(式)」が出来上がりました!
■ 多くの人がつまずく!よくある2つの疑問
「移動前の座標を元の式に代入しただけなのに、なぜ突然それが移動後のグラフの式になるの?」
これが、軌跡(きせき)を学ぶ上で多くの中高生が抱える最大のモヤモヤです。
これをスッキリ理解するコツは、「グラフの式とは、そのグラフ上にある点の『 \(x\) 座標と \(y\) 座標の関係』を表したものである」と思い出すことです。
私たちは今、移動後の点 \( B(x, y) \) の「\(x\) と \(y\) の間にどんな関係があるか」を知りたいわけです。
- 移動後の点 \( B(x, y) \) は、直接の「自分の関係式」を知りません。
- しかし、点 \( B \) を 3 ずつ戻した元の点 \( A(x-3, y-3) \) なら、元のグラフ上にあるので「(縦の座標)= 2 ×(横の座標)²」という元の関係(\( y^* = 2(x^*)^2 \))を満たすと分かっています。
- だから、元の点 \( A \) の縦の座標である \( (y-3) \) と、横の座標である \( (x-3) \) を、この関係に当てはめます。
すると、\( (y-3) = 2(x-3)^2 \) という等式が出来上がります。
さて、この完成した等式を見てみてください。
式の中には、もう元の点 \( A \) の座標 \( x^* \) や \( y^* \) はどこにもありません。
登場しているのは「移動後の点 \( B \) の座標である \( x \) と \( y \)」だけです。
💡 結論
つまり、この式は「移動後の点 \( B \) の、\(x\) 座標と \(y\) 座標が満たすべき関係式」そのものです。
だからこそ、この式がそのまま「移動後のグラフの式」になるのです。
「\( x \) は \( (x-3) \) とマイナスになるのに、なぜ \( y \) 軸方向への移動は式の最後にそのまま \( +3 \) されているの?」
ステップ4で導いた式をよく見てみましょう。
実は、\( x \) 軸だけでなく、\( y \) 軸方向への移動も、本来は \( (y - 3) \) のように「マイナス」がついているのです。数学的にはどちらも全く同じ扱い(引き算)をしています。
しかし、関数の式は通常「\( y = \cdots \)」の形(陽関数といいます)で書くルールがあります。そのため、左辺にある \( -3 \) を右辺に移項します。
💡 結論
移項によって、結果的に「\( y \) 軸方向への移動だけそのままの符号を足している」ように見えるわけです。これが平行移動の式の正体です。