鶴見駅に横須賀線ホームがない理由から、新設計画、地域要望、そして実現時の影響までを徹底解説。
鶴見駅は1872年(明治5年)開業の日本最古級の駅。 開業当初から東海道本線の長距離列車は停車せず、蒸気機関車の加速性能の低さや乗客の少なさが理由でした。 東京~横浜間の近距離輸送には電車(京浜線、現在の京浜東北線)が導入され、鶴見駅は約110年間通過駅でした。
鶴見駅には多数のJR路線が集中しますが、旅客ホームは京浜東北線と鶴見線のみ。 横須賀線(湘南新宿ライン含む)は品鶴線と呼ばれる貨物別線を走行しており、京浜東北線ホームのさらに外側を通過します。 既存ホームから離れた位置を走るため、物理的に停車が困難な状態が続いています。
現時点で正式計画は存在しませんが、国・自治体・鉄道事業者レベルで検討や要望が継続中。 横浜市は「京浜臨海部再編整備マスタープラン」で「相鉄・JR直通線の鶴見駅停車」を重要項目に明記。
横浜市は2013~2016年度に調査し、物理的にはホーム設置可能と結論。 しかし、概算工事費は約180億~200億円、工期は約12~14年と報告。 費用便益比(B/C)は1.6以上と高く、事業効果は見込めます。
JR東日本は「大規模改良工事が必要」「貨物輸送ダイヤへの影響大」とし、関係自治体の協力が不可欠な長期検討課題との立場。 横浜市は「開業時には間に合わないが、今後も実現に向け知恵を出し合い課題解決に取り組む」と働きかけを継続。 課題:技術的問題、費用負担調整、国の補助金、貨物列車運行への影響緩和策。
「半世紀近くにわたる鶴見区民の悲願」。 1960年代後半から毎年要望書提出。 2012~2013年には約2万筆の署名が集まり、JR東日本本社へ提出。
2014年9月「鶴見駅中距離電車停車等推進期成会」が発足。 神奈川県・横浜市・鶴見区主導で、自治会町内会、企業、議員など幅広い関係者が参加。 2015年、2016年にJR東日本、横浜市へ要望書を提出。 2018年7月、JR東日本から「請願駅(自治体等が費用負担する駅)としての設置」の回答。
相鉄・JR直通線開業(2019年)を控え、相鉄直通列車の鶴見駅停車を最優先に要望活動を活発化。 2019年2月には鶴見区長らがJR東日本本社を訪問し直接要望。 「総持寺踏切」廃止(2012年)で用地課題が一つ解消され、「今がラストチャンス」の機運。 行政・住民・企業・議員が一丸となった要望活動が現在も継続中。
鶴見駅は1日あたり約7万人(乗車人員)が利用する主要駅。 横浜市内のJR在来線駅で第4位の乗車人員数。 鶴見区の人口も年々増加傾向。
利用できるのは京浜東北線と鶴見線のみ。 東海道線・横須賀線・湘南新宿ライン・相鉄直通線は通過。 東京・新宿・渋谷方面へは乗り換えや遠回りを強いられ、所要時間で不利。 ラッシュ時の京浜東北線混雑の一因にも。
旧花月園競輪場跡地での大規模再開発(UR都市機構による住宅開発等)が計画中。 これにより鶴見駅の通勤需要は一層拡大する見通し。 京浜工業地帯の中心に位置し、広域から人々が集まる地域。 輸送力強化と利便性向上が地域の重要課題。
湘南新宿ライン経由で新宿・渋谷方面へ直通可能になり、大幅な時間短縮。 千葉方面・成田空港方面への乗換なし直結も可能に。
相鉄・JR直通列車で羽沢横浜国大・二俣川・海老名方面へのアクセス向上。 横浜駅を経由せず相鉄線方面へ移動でき、新たな利便ルート形成。
武蔵小杉~羽沢横浜国大駅間(17.6km)が二分割され、列車運行の柔軟性が向上。 輸送障害発生時の折返し運転等が可能になり、ダイヤ乱れ時の復旧が円滑に。
相鉄線から都心方面へ向かう乗客の一部が鶴見乗換えに分散。 朝夕ラッシュ時の横浜駅の混雑緩和に寄与。
相鉄・JR直通線と鶴見線(海岸部への路線)との接続が生まれ、産業道路沿線・臨海部から相鉄線方面へのアクセス向上。
鶴見~新宿間:現在の約45分から直通約30分台に短縮。 鶴見~羽沢横浜国大:直通列車で約10分強に。 武蔵小杉~羽沢間の直通列車は数分延びるが、地域利便性向上効果が上回ると見込まれる。
事業費約180~200億円、工期12~14年の巨大プロジェクト。 京浜東北線ホーム付近の改良や線路付け替え等の大規模工事が必要。 24時間稼働する貨物線の合間を縫って工事。 国や自治体からの財政支援(請願駅方式、国庫補助)が前提。